腰痛対策には、体を休めて安静にしているよりは、適度な運動を積極的におこなったほうが、腰痛の改善に効果があるといわれています。
なぜなら、腰椎(腰の背骨)を支える大きな役割を担っているのが、「腹筋と背筋」です。運動不足により、腰を支える「筋力の低下」や「筋肉がコリ固まった状態」になると腰椎を支えられなくなるからです。
「腰痛対策」に適した運動は、ストレッチ・ウオーキング・筋力トレーニング・水中運動の4つがオススメです。
運動は長く続けることで少しずつ効果を得られます。自分の体力と相談しながら、ムリをせずに、自分にあった運動を長く続けましょう。
① ストレッチ
ストレッチは、リンパ液や血液の流れを良くします。筋肉の緊張がほぐれて痛みがやわらぐことから腰痛の改善にもつながります。
日常生活で姿勢が保たれ、歩くことや運動ができるのは、筋肉によって背骨を支えているからです。
運動不足により、筋力が弱まったり、筋肉が緊張してコリ固まったりすると、腰椎(腰の背骨)を支えられなくなるため、腰痛が悪化する要因となります。
ストレッチは、腰まわりの筋肉の柔軟性を良くする働きがあります。腰の動かせる範囲が広くなり、脚の動きもスムーズになります。
ウオーキングやスポーツなど、運動を始める前に、ストレッチは欠かせません。体の動きが柔軟になることから、運動効率が良くなり、ケガの予防にもなるのです。
ムリをせずに痛みが起こらない程度に!
自分の体力や体調にあわせて、負荷をコントロールして行うことができます。運動の初心者や苦手な人でも安心して取り組めるのがストレッチの魅力です。
腰痛対策のストレッチは、背中から腰にかけての筋肉、お尻から太ももの横と裏側の筋肉まで、、腰まわりの筋肉を中心に、伸ばす筋肉を意識しながら行います。
筋肉を痛めることがないように、少しずつゆっくりとおこないます。けっして、はずみをつけたり、ムリに伸ばしたりしてはいけません。
慣れるまでの期間は、少し伸ばしただけでも負荷や痛みを感じることがあると思いますが、ムリのない範囲でおこなうことが長くつづけるコツです。
ストレッチを行うときの5つの注意点
こわばった腰に負担をかけないように注意して、ムリのないようにおこないましょう。
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「適度な硬さ」のマットをつかう
市販のストレッチ用のマットをつかうなどして、柔らかすぎたり硬すぎたりする床では、おこなわないようにしましょう。腰を痛める要因になります。
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「痛みのない範囲」で伸ばす
痛みのない範囲で、気持ちが良い程度に伸ばします。力を抜いて、けっしてムリをしないことです。
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落ち着いて「ゆっくり」と伸ばす
1ヶ所のストレッチには、25秒~30秒と秒読みしながら、少しずつ時間をかけてゆっくり伸ばします。
けっして、はずみをつけたり、急に伸ばしたりしてはいけません。
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息を止めないようにする
自然な呼吸をしながら伸ばすようにし、息を止めないように行います。
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痛みがあるときは、やめる
腰や太ももから足にかけて、強い痛みがある場合は中止します。腰痛を悪化させる恐れがあるからです。
ストレッチは、腰を支える筋肉の柔軟性をよくします。緊張してコリ固まった筋肉がほぐれ、痛みもやわらぎます。
② ウオーキング
フォームを気にせず「あせらず、じっくり」続けよう
腰痛対策の運動のなかで、もっとも手軽でオススメなのはウオーキングです。どこでもカンタンにはじめられ、体力に自信のない人でも安心して取り組めます。
歩き方のコツは、「着地」と「蹴り出し」を意識して!
腰痛予防と改善するための歩き方で、もっとも大切なことは、かかとから「着地」することと、つま先で「蹴り出す」ことです。
ウオーキングの基本的な「正しい歩き方」をご案内しますが、あくまでも参考程度にし、意識しすぎないようにして行いましょう。人はそれぞれ骨格や体型が違うので、誰にでも共通する歩き方はありません。
フォーム(歩き方)を意識しすぎて歩いたら、肩コリがひどくなったという人がいます。
「正しい歩き方」のフォームを気にしすぎると、変なところに力が入って動きが、ぎこちなくなります。腰以外の部位にもコリや痛みが起こりやすくなるのでリラックスして、ラクな姿勢で行うようにしましょう。
フォームを気にせず「あせらず、じっくり」続けることがウオーキングのコツです。
「正しい歩き方」6つのポイント
- まっすぐ前方を見て、あごは軽く引く
- ねこ背にならないように、背筋はまっすぐ伸ばす
- 腰が反らないように、お腹に力を入れて引き締める
- 腕は、ヒジを伸ばしたまま、リラックスして自然に振る
- 脚は、ひざを自然に伸ばす
- 歩幅は、大きくならないように、自然に楽な歩幅で
歩幅を意識しすぎてしまい、早く歩こうとして大きい歩幅で歩いたら、かえって「腰を痛めてしまった」という人がいます。
どれくらいの歩幅がよいかは、人によって身長や脚の長さが違うように歩幅も違います。あまり気にせず、自分にあった歩きやすい歩幅で歩くようにしましょう。
歩き方のコツは、前足は「かかと」から、しっかり着地するようにして、後ろ足は「つま先」で地面をしっかり蹴るようにします。
ウオーキングを安全に行うためにも、運動の前後に、しっかりと「スチレッチ」を行うことをオススメします。腰の可動範囲が広がり、安定性が良くなりケガの予防にもなります。
硬い地面の衝撃から腰と脚をまもるため、ウオーキングシューズなど、足にあった衝撃吸収タイプのシューズを使用することも、とても大切です。
ウオーキングは、自分にあった距離とスピードで!
ウオーキングは、約20分が目安です。距離に換算すると1.5Km~2Kmになります。少し汗をかくくらいを目標に行いましょう。
最初から、歩数や距離を大きく目標設定してしまい、ムリに達成しようとして歩き過ぎたことから、疲労でダウンする人がいます。
歩数をあまり意識せずに、自分の体力にあった歩数で、ウオーキングを楽しむ感覚で行いましょう
はじめは、誰でもウオーキングの効果を早く体験したくて、ムリをしてしまいます。歩いたあとに、自分にあった歩き方ができたかどうかを確認してみましょう。
自分の体にあった「ウオーキング」を楽しくできましたか?
歩いた後に、5つの「体の状態」をチェックしてみよう!
- □ 腰まわりに「痛みや違和感」が起こったり、痛みがひどくなったりしていない
- □ 肩・背中・脚など「腰以外の部位」に痛みや違和感がない
- □ 少し汗をかいており、体もあたたまっている
- □ 心地よい疲労感はあるが、疲れきってグッタリしていない
- □ 楽しんで歩くことができて、気分もスッキリしている
歩いた後の結果が、5つの「体の状態」すべてにチェックがついていれば、自分にあったウオーキングを楽しくできたということです。
もし、チェックの数が少ない場合は、歩く距離や歩幅などを再確認して、自分にあった「楽な歩き方」を見直してみましょう。
足首やヒザなど脚部に痛みがある場合は、前もって「歩く距離」や「フォーム」などを医師に相談することをオススメします。腰痛に加えて他の部位にも痛みがある場合は、ウオーキングによって痛みがひどくなることがあるからです。
運動不足で硬くなった筋肉がやわらかくなり、腰まわりの柔軟性も良くなります。腰の可動範囲も広がり、腰や下半身の動きもスムーズになり快適です。
歩くことに慣れないうちは、15分~20分ほどの距離からはじめて、体力がついてきて歩けるようになったら少しずつ距離を伸ばしていくと効果的です。
「継続は力なり」とよくいわれるように、「慢性腰痛」の予防や改善に効果がでるまでには、3ヶ月以上続けることが必要だといわれています。
歩く距離にとらわれず、ムリをしないで「楽しく、気持ちよく」歩くことがウオーキングを長くつづけるコツです。
③ 筋力トレーニング
腰を支え、安定性を保つ、3つの筋肉を動かす
筋力トレーニングは、腰椎(腰の背骨)を支える腹筋と背筋、大殿筋を基本に行います。腰回りの筋肉のおかげで姿勢が保たれ、運動をスムーズに行うことができます。
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腹筋 (腹直筋)
腹筋のなかでも、腰痛対策に深く関係しているのが「腹直筋(ふくちょくきん)」です。お腹の前面に縦走(たてにはしる)している平らで長い筋肉です。
日常生活では、あお向け姿勢から起き上がるときや、姿勢の安定に関係します。本来の働きは、腰の前屈運動を主体とし、側屈や回転動作にも貢献します。
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背筋 (脊柱起立筋)
背筋のなかでも、腰痛対策に深く関係しているのが「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」です。背骨に沿った筋肉を総称して、脊柱起立筋と呼びます。
背骨を支える筋肉の中でもっとも大きく、前かがみになったり、上体を起こしたりする動作を担っています。あらゆるスポーツの動きに関係しており、特に上半身を安定させる働きがあります
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大殿筋(だいでんきん)
お尻を支える筋肉のなかでも、腰痛対策に深く関係しているのが「大殿筋)」です。
骨盤と大腿骨(だいたいこつ)をつなぎ、腰椎(ようつい)を下から支えて動きを安定させる働きがあります。日常生活では、歩く、走る、立つ、座るなど全ての日常動作に関係します。
腹直筋・脊柱起立筋・大殿筋の3つの重要な筋肉が、バランスよく働くことにより姿勢が保たれ、運動をスムーズに行うことができるのです。
ムリせずに、自分のできる範囲で動かそう
筋力トレーニングを初めて行う人に、良く有りがちなのが「早く筋肉を鍛えたい」、「もっと筋肉をつけたい」と意気込んで、目一杯の力でトレーニングにのぞむ人がいます。
その結果、筋肉疲労や筋肉をいためてしまい、しばらくの間トレーニングができなくなるため、早々と止める人がとても多いです。
筋力トレーニングの目的は、「きたえる」ことではなく、背骨を支えている背中とお腹の筋肉を効率よく「動かす」ことです。
ムリをすると、腰痛が悪化することがあるので、ムリせずに自分ができる範囲の軽いものから始めましょう。毎日動かすことを習慣にして、少しずつ負荷を大きくしていくと、次第に筋肉が増えて筋力もついてきます。
🔷 筋トレのポイントは、毎日コツコツと長く続けること!
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「長くつづかない」、止めてしまう人のやり方
筋トレが未経験でありながら、最初から腹筋運動の「目標は1日100回」、鍛える時間も2時間は必要だ!などと、ムリにムリを重ねるようなやり方は、結果的に「ハードでつらい」、「気持ち悪くなり,楽しくない」となって止めてしまいます。
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楽しく「長くつづけられる」人のやり方
自分の体力に合った、できる範囲でトレーニングしていこう。毎日少しづつでも続けよう! とムリをしないやり方は、「つらくなく達成感がある」、「明日はもう少しできるようになりたい」という前向きな気持ちで、楽しく長く続けることができます。
肉体疲労を起こしたり筋肉をいためたりして、続けることが苦痛になってしまうのです。
自分の体と相談しながら、ムリをせず、少しずつでも毎日コツコツと行うようにしましょう。「筋肉をきたえる」ことではなく、「筋肉を動かす」ことを意識することがとても大切です。
④ 水中運動
水の力を利用して,「浮力や抵抗力」によって効率的に運動できる
腰痛対策の運動として、水中運動の最大のメリットは、体重の負荷を軽減する「浮力」や適度な負荷がある「水の抵抗」を利用できることです。
直接の体重がかからない状態で、「浮力を利用」することで腰への負担を軽減しながら運動できます。
水中運動は、全身を使った「有酸素運動」です。ダイエットにも大きな効果があるので、特に「肥満による腰痛」が起こっている人には、オススメしたい運動です。
🔷 豊富な運動の種類から「自分にあったもの」を選ぶ
水中運動は、自分の体力や経験、腰痛の状態にあわせてムリのないものを選びましょう。運動の種類は、水中歩行や水泳の他、スポーツクラブでのアクアビクスもありますが、はじめは水中歩行から行うことをオススメします。
水中を前に進んで歩くだけのカンタンな運動でも、水の抵抗によって脚(あし)に負荷がかかります。足を前に出したり下ろしたりする単純な運動ですが、脚や腰まわりの筋肉を同時にきたえることができるからです。
水中での運動は、浮力がはたらいて動きがラクに感じますが、意外にも感じているより多くの体力を消耗しています。プールから上がったときに疲労と筋肉痛でダウンしてしまう人もいるのでムリをしないことも、とても大切です。
水中運動のメリット・デメリットを理解して行う
●メリット① 腰にかかる負担を軽減できる
腰痛に悩んでいる人の多くが心配されているのが、腰にかかる「負荷」の強さです。 水中では、浮力よって体が軽くなるため、腰への負担が陸上の運動よりも軽減されます。体重の負荷による腰痛で思うような運動をできない人の場合も、水中ならラクに運動できるのです。
水中に沈んでいる部分と同じ体積量の浮力が作用します。このため水位に応じて体重が軽減されることを「アルキメデスの原理」で浮力といいます。
水中での安静立位なら,臍部(さいぶ・へその位置)程度の水位では体重は約 50%に軽減され,首まで沈んでいると約10%程度に軽減されます。
たとえば、体重が58キロの人なら水の中では約5.8キロに、75キロの大柄な人でも約7.5キロと、陸上での体重の10分の1になってしまいます。
アルキメデスの原理
静止している流体の中に全部または一部沈んでいる物体は,その排除した流体の重さに等しい力で,流体から鉛直上向きに押上げられている。これをアルキメデスの原理といい,この押上げる力を浮力という。前 220年にアルキメデスが発見し,この原理を利用して,黄金の王冠の中に銀が混っているのを発見したといわれる。
●メリット② 自分にあった強度でトレーニングできる
水中では体を早く動かしたり、大きく動かしたりすほど抵抗が生じます。体力に自信のある人は大きな抵抗で、自信のない人は小さな抵抗でトレーニングできます。
たとえば、水中歩行では、歩くスピードを速くすると進行方向への抵抗が強くなり、ゆっくり歩くと抵抗は弱まります。体力にあわせて、自分でスピードを変化させることで強度調整も可能です。
●メリット③ 血液循環が促進され、新陳代謝がよくなる
水は空気よりも熱を伝えやすく、体温より低いプールの水温では、皮ふ血管の収縮作用が活発になります。水の中で体温の低下を防ぎ、保つため代謝が活発になり血液循環が促進されます。
熱伝導率は、気体、液体、固体の順で大きくなります。水(10℃)の熱伝導率は0.582に対して乾燥空気の熱伝導率は0.0241と低く、水は空気よりも熱伝導率が約24倍と高く、熱を伝えやすい。
●デメリット① 運動できる時間と場所が制限される
水中運動は、ストレッチやウオーキングと違い、温水プールの施設やスポーツクラブなどに通う必要があるので、手軽さでは少しおとります。近場になかったり費用がかかったりすると、通うことが負担になって長つづきしない場合もあります。
●デメリット② 身体が冷えられ、痛みが増すこともある
水の中は、どうしても体温より温度が低くなるため、長く入っていると身体が冷えられます。腰痛の場合も、冷えにより痛みが増す場合があるので、プールに入っている時間を調整する必要があります。
身体が冷える前に短時間でプールから出るなどして運動中に腰の状態をよく確認することが必要です。
水中運動を始める前の注意点
- できるだけ、運動する機会を減らさないように、天候や気温の変化などに左右されない室内型の温水プールが適しています。
- プールに入る前と後に、準備運動やストレッチを忘れずに行いましょう。
- 身体をならす意味でも、ゆっくりとプールに入るようにします。その日のコンディションを確かめるために、肩や腰、腕や脚を動かしたり、軽くジャンプを繰り返したりして身体の状態を確認しましょう。
- 腰痛がひどい場合や治療中の病気、気になる症状がある場合は、医師としっかり相談して水中運動のやり方や問題点がないか確認しましょう。
水中運動は、全身を使った「有酸素運動」です。ダイエットにも大きな効果があるので、特に「肥満による腰痛」が起こっている人には、オススメしたい運動です。
自分の体力や経験、腰痛の状態にあわせてムリをせずに、長く続けましょう。
どの運動も少しの努力で手軽にできて、運動強度を自分でコントロールできるので、運動経験がなく、体力に自信のない人でも安心して取り組めます。また、やりすぎによる肉体疲労や筋肉をいためる心配もありません。
運動は、長くつづけることで少しずつ良い効果が得られます。自分の体力と相談しながら、「楽しく、長く」つづけられるものを選びましょう。